凍る雪那 -残影-


 視界を埋め尽くす白。
 それは、自らが望んだもの。
 全てを塗り潰す、圧倒的な色。
 それでもまだ、本当に消したいものは残ったまま。

(私……は……)

 すでに、声にならない声
 それでも尚、溢れ出る想い。
 何度も繰り返される囁き。
 形にならず、意味を持たず。
 ただ、意思だけが紡がれる。

(いない……なのに……)

 響く意思。
 応える風景。
 撒き上がる白。
 消えない色。

 その影が望んだ事は何なのか。
 もはや、その面影すら見えずに。

 ――歌声が、聞こえた。

(……?)

 それは、全てを包み込む音。
 塗り潰された白色の上から。
 その世界をすり抜ける様に。

(赤い……紅い……)

 白い意識に、別の色が混ざる。
 響いてきた歌声の色。
 そして、遠い昔の色。
 ずっと忘れていた――忘れたかった、色。

「あな……たは……」

 蘇る幻像。
 白い世界。
 染める赤。
 動かない影。
 凍る世界。
 凍らせたのは――

「……っぁあああああっ!」

 声がする。
 白色が撒き上がる。
 その世界を意識しないままに。
 ただ、歩き続ける。

 目指す場所へ。
 見つけた場所へ。
 ――終焉の、場所へ。

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