凍る雪那 -泡雪-


 其処はまず、白かった。
 一面が白に覆い隠されて、それでも足りないとばかりに降り注ぐ欠片。
 ゆっくりと。
 ゆっくりと。
 その風景の上に、更に白色を積み重ねていく。

「寒いね、やっぱり」
「雪、であるからな」

 その場所に踏み入れる影が二つ。
 一つは、その言葉どおりに、寒そうに外套を羽織った少女。
 一つは、それすらも気にせずに、平然と歩む男。
 一見、不自然なようで……不思議と、何処か馴染んだ組み合わせ。

「雪は好きなんだけどね。優しいから」
「ふむ?」

 会話を続けながらも、歩む人影達。
 歩む速度そのものは、さして速くは無い。
 それでも、確実に一歩ずつ、前へ。
 目指す先も見えない白の中で、揺らぐ事も無く。

「ほら、雨は突き刺さるけど……雪は、包んでくれるから」
「そして、潰されるが?」

 ふと、その足が止まる。
 止めたのは、他愛無い言葉。
 その合間にもただ、雪は降る。
 その言葉をも、覆い隠すように。

「そうなんだけど……それでも、ね」
「そう、だったな」

 呟いた、か細い言葉。
 閉じた目に映る風景。
 目の前の白とは違う、それは。

 積み上げた白は、大地を傷跡から護り。
 白の上に残された傷跡はまた、ゆっくりと白が覆い隠す。
 ゆっくりと、しかし確実に。
 その白色が続く限りは。
 けれど――

「……行くぞ、近い」
「あ、うんっ」

 声に引きずられるようにまた、歩みを進める。
 確かに、目を開いて。
 ただ真っ直ぐに、目指す場所へと。

 その白色の中心へ。
 その白色を終わらせる為に――

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